本が好き。
本を買うときは欲しいと思ったら何の負い目も躊躇もなく買ってしまう。洋服や装飾品を買う時には無駄遣いかもとやめることの方が多いくらいなのに。
とはいえ決して多読ではない。好きな本を少しずつ読み進めるというのがここ2、3年の私の本との向き合い方になっている。
好きな文章は何度も繰り返し読む。まだ全部読み切ってないうちにも、ページを戻しては好きな箇所を読み返したりもする。
言葉から心に広がっていく情景に癒されたり、温かい気持ちになったり。そんな瞬間がいつもとても幸せ。
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今読んでいる石川直樹さんの本『 いま生きているという冒険』がもうすぐ終わりそうなので、今日は次に読む本を買ってみた。
『いま生きている〜』はとても面白い本だ。
面白い本はいつも読み終えるのが名残惜しい。後半になるにつれて読むスピードが下がり、最後の方は終わらないで!なんて思ったりもする。夜が来て楽しい遊びの終わりを告げられても受け入れられずに駄々をこねる子どもみたいな気持ち。
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『 いま生きているという冒険』の詳しい内容についてはまた改めるとして、私はこれまで何冊か石川さんの本を読んできて、その文章をとても好きだなと思う。
8000m級の高山への登山や、ミクロネシアに伝わる星の航海術を使ったカヌーでの航海、熱気球での太平洋横断への挑戦など、そのどれもが生きるか死ぬかの大冒険で。でもその死んでもおかしくないような経験を綴る言葉は過度なエモーショナルに寄っておらず、かと言ってクールに突き放すふうでも決してなく。言いたいことは明瞭に伝わってくるのに押し付けがましさが全くない。理想と現実のバランスがとても取れている感があるともいうのか…。
私は人間同士のやり取りや揉め事なんかで心が疲弊した時、その文に触れると何か自分の心がとても正気に戻る感じがする。書かれてる事実は大冒険で、生死に関わるような話もあるというのに、だ。
思うに、人間の手が加えられてない地球の神秘について教えてもらえるというのも心が落ち着く理由としてある気がする。
石川さんの本を読んでいると、人間が支配しようにもしきれない領域というのがこの地球上にはいまだたくさんあることがよくわかる。大地や空や海は人間よりもはるかに大きい存在であり、人はその力に勝つことはできない。
私はその事実に心底ホッとする。
巨万の富を築いても名声を得たとしても大海の海に身一つ投げ出されたならその人間はあまりに無力だ。酸素の薄くなってくる高所だってそう。そこでどんな詭弁や嘘を並べてみたとて何の意味も成さない。富も名声も人間の生存のキャパすれすれの状況のなかではあまりに無意味だ。
そんな場所が地球上にあること、なんだかそれ自体が希望な気もする。
大袈裟かもしれないけれど。なんとなく。
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もうすぐ読み終えてしまうのが名残惜しい。