なんでもない日々。

日々の思いや気づきなどを雑多に書きます。

心の中の島。

雨が降ってる。今夜これからどんどん強く降ってくるのかな。どうなんやろう。

なんて言ってる間にも雨音が強くなってきた。

石川直樹さんの本『いま生きているという冒険』をついに読み終えた。明日から新しい本に入る予定。

その前に、本の中の心に残った部分をかいつまんで少しまとめというか、メモというか。

高校生の頃のインドへの一人旅に始まり、アラスカへの旅、北極から南極までの縦断、七大陸最高峰とエベレスト(チョモランマ)登頂、熱気球太平洋横断…と、本当にいろんな話があってそのどれもがとても興味深く面白かった。

その中でも特に、ミクロネシアに伝わる星の航海術を学びに現地へ赴いたときの話はすべてがとても素敵だった。

星の航海術とは簡単に言うと、地図もコンパスも使わずに空の星の位置を見ながら今いる場所を把握し、向かうべき方角を定めて進んでいく航海術のこと。

ミクロネシアの航海者は島と島の位置が描かれた地図を歌にして覚えるらしい。その歌は「星の歌」と呼ばれ、長いものは1時間以上も続くのだと。

コンパスは夜空です。円周上に32の星を配置した「スターコンパス」を頭のなかに描き、それを夜空の星々と照らし合わせて、方角を知るのです。

一瞬、本当にこんなことが可能なのかと驚いてしまうのだけど、文中にはこうも書かれてある。

もし地図やコンパスをたよりに航海している人が、それらを一切なくしてしまったら、途方に暮れてしまうでしょう。しかし機械や装備に寄りかからず、そういったすべての要素を知恵に置き換えることができるとしたら、その人は身体一つで歩き続けることができます。それは人間に備わっている野生の力を最大限に引き出した、もっともシンプルで力強い生き方につながっていくのです。

この言葉の説得力のあること…!本当にそうやなぁと思う。

全然レベルは違うけど、料理をしてても思う。

クックパッドとかレシピを紹介する媒体って大量にあって、それだけを見てそのとおりに作れば一応は美味しいものができあがることが多い。でも材料の分量が違っていたり、指定された調味料が無かったり、それ以外にも不測の事態が起こったならたちまちどうしたらいいかわからなくなってしまいがちな気がして。それに、仮にキャベツ半玉と書かれてあっても個体差は当然あって、旬のものかそうではないものかという収穫された時期によっても全然違っていたりする。場合によってはそれだけで"レシピ通り"にはいかなくなってしまうこともあって…。

そうならないためには、自分の五感を開いて素材と向き合うしかない。

たとえば野菜なら、もぎたてのものなのか少し時間を置いたものなのかで扱い方を変えたり。触ってみてしんなりしてたらパリッとするように先に水に少し浸しておいたりだとか。火を入れた時に野菜から出てくる水の塩梅を目で見ながら追加で水をどれくらい加えるかを決めたりだとかもそう。

臭いでわかることもたくさんある。ある意味身を守るにあたって一番大事な情報である、"腐ってないかどうか"は見た目もそうだけど嗅覚が教えてくれるものだ。煮えるときの音がグツグツなのかフツフツなのか、揚げた時の衣の重なり合う音がカサカサなのかグシャグシャなのか、音から知れることもたくさんある。火を止めるタイミングや、味が濃い時、薄い時の対処法なんかもレシピを見るだけではよくわからなかったりするし…。

結局のところ、すべては自分の身体で感じ取って自分で決めるしかない。でもそれが料理の面白くて楽しいところだとも思う。

…話が少し逸れたかも。壮大な星の航海術の話を家庭料理に並べて語って良かったのかは知らない。

でも、なんとなくだけど、ちょっと似てるなって思ったから。これも素朴な一読者の視点ということで許してもらえたらと。笑

本の中では石川さんが星の航海術を用いて数々の大航海を成功させてきたその道のレジェンドといえるマウという人のところへ弟子入りしたときの話が書かれている。

マウと共に出たサイパンからサタワル島へ向かうカヌーでの航海は波乱の連続で、死をも意識するような過酷なものだった。でもそんななかでもマウは方角の指示を出す以外は一切喋らず粛々とナビゲーションを続けていたらしい。レジェンドがレジェンドたるのには理由がある。この部分を読んでそう思った。

マウは最後に石川さんに現地の言葉で"カーリュウ"という名を授けてくれて、それは「海の男」という意味で、それに石川さんはとても感激した。そしてそのあとに続く言葉がとても素敵だった。

ぼくは震えるほど嬉しく、そして感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。

マウはカヌーを目的地に導く名ナビゲーターであるばかりでなく、ぼく個人にとっての心の指針でもあります。たとえ広大な海で迷いそうになっても、自分の中にある島を見失いさえしなければ、きっと風は吹く。だからマウは言うのです。「心のなかに島が見えるか」と。

この 「心のなかに島が見えるか」という言葉がとても素敵で、本を読んだあとも反芻してみている。

私も私の向かうべき島を見失わないように。心に吹く風がいつも私を良い場所へと導いてくれると信じられるように。

そんな自分がいつもここにありますようにと願う気持ちもあったりする。

まだ他にも心に残った部分があるから改めてそれも書くかもしれない。

ひとまず。

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