なんでもない日々。

日々の思いや気づきなどを雑多に書きます。

台風が来なかった夜のライブのこと。

台風がいつ来るのかと、職場でもそこら中でもみんなヤキモキしながら過ごしていて、でも今日の大阪の空はよく晴れた夏の空だった。

今回ほどよくわからない台風って無い気がする。毎日進路予想が変わって全然先の展開が読めない。人類の歩みと共に科学は随分と発展したはずなのに、台風の動向を正確に把握するなんてのはいまだできなくて、気まぐれな動きになすすべなく翻弄されてしまう。こういうとき、古来の人々が豊作を祈る祭りや儀式を真剣に執り行ってきた気持ちが少しわかるような気がする。今でも、たぶんこれからも、結局はそうやって祈るしかない場面がいくらでもあるんやろうなと思ったりも。

とにもかくにも、今のところ大阪は風も雨も大したことはなく、そのおかげで夜は billboard大阪であったアン・サリーさんのライブに無事行って来れた。ビルボードは本当に久しぶりで、前行った時は歳上のお姉さまに連れられてテーブル席で食事もした。でも今日は一人だったのでセルフサービスのカジュアルエリアのカウンターで観ることにした。

台風の行方がよくわからないせいでキャンセルした人もいそうだなと思っていたのだけど、開演30分前に着くと席は概ね埋まっていた。着いてすぐ、ドリンクチケットを持ってバーカウンターへ飲み物をもらいに行ったら、前に白人と黒人の男性二人組がいて、バーテンダーさんにあれこれと質問をしていた。そのやりとりが驚くほどに長くて、私の後ろにはかなりの列ができてきた。 メニューもそんなに多くないというのに一体何をそんなに相談することがあるんやろう…と思いつつ、待つしかないのでただひたすらに待っていたら、後ろの女性二人組が「バーテンのバイトをもっと雇ったらいいのに」と明らかにイラついた雰囲気で囁くのが聞こえてきたりもして、なんだかこちらがソワソワしてしまった。

そんなことは気づきもしてない風のちょっとマイペースすぎる二人がやっとドリンクを手にして去り、私はノンアルコールのピンクレモネードをさっと注文してすぐにもらい、席へと向かったら、なんと先ほどの二人組は私の隣の席だった。二人は開演直前まで飲んで食べながらずっと喋りまくっていて、(もしやこの二人は今日たまたま入って来た一見さんでこのままライブ中もヒソヒソ話し続けるんじゃ…)と少し不安がよぎった。私は今日が初めてのアン・サリーさんのライブでとても楽しみにしていたから、もしもそうだとしたら嫌やなぁなんて思って。

でも心配は杞憂だった。照明が落ちた瞬間、二人は話をピタッと止めて、メンバー登場シーンでは割れんばかりの拍手。おそらく二人のうち、白人さんの方がアン・サリーさんのファンで、もう一人の黒人さんは連れてこられた感じだったのだけど、二人とも終始歌声と演奏に静かに聴き入っていた。

ライブは実際素晴らしくて、一曲聴くごとに魂が綺麗に磨かれていくみたいな時間だった。歌声も演奏も非の打ち所がないとはこのことかと。ギターもピアノも美しい音色を奏でられていて、アン・サリーさんの遠くまですっと伸びていくような透明な歌声にはひたすらに癒された。

後半でソウルフラワーユニオンの「満月の夕(まんげつのゆうべ)」のカバーを歌われたときには思わず泣いてしまった。まずこの曲が名曲すぎるのと、アンさんの歌唱で聴くと歌詞の一つ一つが心の柔らかいところを優しく刺激していく感じがあって…。ふと見たらお隣の白人さんも泣いてるのがわかって、その瞬間、長々ドリンク待ちしたこととか全部吹き飛んで、急に我ら仲間!みたいな親近感が湧いたりもあった。(ちなみにお隣さんはアンコールの「蘇州夜曲」でも泣いててMCにもうんうんと頷きつつ些細なことにも笑いながら聞いてたから、一見さんどころか筋金入りのファンだと思う)

どの曲も全部良かったけど、「満月の夕」に続けて演奏された朝鮮民謡の「トラジ」には驚きだったな。本来のこの曲の古典的なイメージが一新されるような、見事にオシャレでジャジーなカッコいい曲として歌われていてすごかった。合間に入るMCではほっこりするような思わず笑ってしまうような話をたくさんされてて笑ったし、お隣さんも同じく笑ってた。(親近感再び。笑)

なんだか本当に良い時間だった。アンさんのライブ、これからも観に来たいなぁと心から思ったし、無事に観に来れて本当に良かったなぁと。帰りの電車で幸せ気分をずっと噛み締めていて、今もそれが続いてる。良かった。うん。

久しぶりのビルボードはやっぱり大人の空間だった。

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満月の夕」は阪神淡路大震災の惨状を見て作られた曲。名曲。